【コラム】第2回〈打撲〉
「痛み」より恐い?
突然ですが、あなたは転んだことはありませんか?
荷物をもって階段を降りていたら、踏み外してそのままストンと
まっすぐお尻から落ちてしまったり……。
雨の日に外出して帰りの家路を急いでいると、突然ツルッと滑って
アスファルトに身体のどこかを打ちつけたり……。
冬ともなれば、路面は凍りつきます。
油断していると……ステンといってしまった経験、ありませんか?
………想像しただけでも痛そうですよね?
でも〈打撲〉の本当の恐ろしさは、「痛み」ではありません。
Aさんという、40代の男性から連絡がありました。
自転車に乗っていて転び、膝を打ったという。
私「……で、痛みの感じはどうなんですか?」
Aさん「打ったところより、膝の上の方が痛む」
私「上の方…それで、すりむいていたりしてますか?」
Aさん「いや、打ったところは腫れてもいない」
こう聞いて私は即座に「う〜ん、これは大変かも…」と思いました。
こういう場合、実はすりむいていたり、腫れていたりといった方が
「整体」的には安心なんですね。
(理由は後述)
打った直後は歩けなかったらしく、連絡いただいた時は膝を曲げて
歩くことができない状況でした。
インパクト
ともかく動けるようになってから来ていただき、調整にかかりました。
予想通り、〈打撲〉したそのダメージはまだまだ表面に浮いてこず、
奥に潜んだ状態でした。
膝の裏側、筋肉でいえば大腿二頭筋や腓腹筋、ヒラメ筋などがパンッと
張り、膝の関節としての働きを阻害している、といった感じです。
この状態が、〈打撲〉の本当の恐さを端的に表現しています。
どういうことかといえば、こういうことです。
すりむいていたりしている、ということは「打った衝撃」は、そのまま
ダイレクトに体内に影響しておらず、少し分散している。
腫れた場合は、すでに身体の治癒システムが作動していて、その部分の
悪影響を修復し始めている。
ということになります。
しかし、この場合は痛むのはむしろ打った部分ではなく、その裏側。
つまり、「衝撃」は後ろに飛んだということ。
そのくらい、ダイレクトに身体に影響している、ということです。
〈打撲〉の本当の恐さは、そのインパクトの瞬間に決まります。
あぶりだす
打った角度、姿勢、その時のメンタリティ…、こういった条件に加え
そのダメージを決定するのが「速度」と「深度」。
この場合、このすべての条件が十分そろっていました。
「つくづく、頭でなくてよかった…」
そう思いながら調整。
調整の目的は、もちろん自然治癒のはたらきを強化すること。
そうして、奥からその「衝撃」の根源をあぶり出すことです。
現在まで3度、この件で調整に来ていただいています。
3度目にして根源に届いたかな…というほど奥に、その「衝撃」は
潜んで、身体を硬直させていました。
私自身交通事故で頭を打っていますが、〈打撲〉のダメージは早く
除いておくにこしたことはありません。
やはり早めの処置が、肝要となるでしょう。
そして、奥に潜ませないことです。
その〈速度〉と〈深度〉にもよりますが、数年後に思わぬ
事態を引き起こすことにもつながりかねませんからね。
腹部
さて、この「コラム」の【第1回】で「不整体」について、少し
説明しました。
今回のAさんの場合、「ヘソ下がヘニャヘニャ」という状態で来訪されました。
「内側から湧いてくる弾力」が、欠けている状態ですね。
身体均整法創始者・故亀井進先生によれば
元来腹部は仰向けの状態において、ヘソより上部は「みぞおち」が少し低く なっていなければならない
とし、さらに
ヘソから下の下腹部は緩やかに盛り上がり、ヘソ下一寸くらいのところ、 即ち丹田がやや高くなって、また次第に下がっていくのが正常な形である
としています。
この観方でいえば、Aさんはこの時下腹部が凹んだ状態だったんですね。
この状態を、理想的な状態へと向かわせる。
それが、まずは何より肝要になります。
3回目、下腹の1点を押圧後、その部分に弾力が戻ってきました。
内側から湧いてくる弾力が、感じられるようになりました。
自然治癒のはたらきが強化・促進され、Aさんの身体を
再生していく、その準備が整ったのです。
次回どのような感じで来訪されるのか、楽しみです。
